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        反戦ビラ無罪 表現規制に歯止め....
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 自衛隊のイラク派遣反対」を訴えるビラを集合住宅の新聞受け
に入れて、住居侵入罪に問われていた市民団体の被告3人が16
日、無罪を手にした。現行犯ではなく、1ヶ月以上の捜査の末の
逮捕。自宅の捜索やパソコンの押収、75日間の長期こう拘留は
何のためだったのか。3被告や支援の市民団体は検察側に対し、
「控訴断念」を求めた。
 身体障害者の介助員をしている高田幸美さんは判決後の記者会
見で拘留中の取り調べを振り返り「捜査員から『運動を止めて立
川から出て行け』などと侮辱的なことを言われた。もう運動はし
ません、と言わずにがんはってよかった」と話した。
 初公判での意見陳述では、「被疑事実を調べるというよりは、
疲れさせ、転向を強要するものだった」と説明した。「二重人格
のしたたか女」「寄生虫」「浮浪児」。捜査員が高田さんに向か
って発した言葉だという。
 51市民団体で作る平和運動の連絡組織「ワールド・ピース・ナ
ウ」は「自衛隊の家族も含め、イラク派遣の賛否について様々な
見解を交流する重要な時期に、特定の言動への政冶弾圧だった」
と、起訴を非難する声明を発表した。
 立川自衛隊監視テント村には明文の規約や入退会の要件もなく、
判決は同団体について「基本的に無党派」とした。内田雅敏弁護
士は「本来、刑事事件にならないのに、起訴した検察の意図を疑
う。警察の暴走を止めねばならない検察の劣化を感じる」と検察
を批判した。
 裁判を支援してきた憲法学者の石埼学・亜細亜大助教授は「住
居侵入の最高裁の判例に沿った判決で、事実認定も詳細にやって
いる。この判決が確定しないと民主主義の根幹にかかわる問題で
多くの市民が引き続き萎縮させられる」と強調した。
 「僕にとっては職場のクビがかかった闘いでもあった。とりあ
えず一安心で、うれしい」
 東京都内の区立中学校の給食調理員である大洞俊之さんは、起
訴後は「起訴休職処分」を受けるなど、生活は乱された。禁固以
上の有罪が確定なら職を失う。
 身体障害者の介助会社を経営する大西章寛さんは「表現活動の
取り締まりに歯止めをかける司法判断をしてくれた」と喜ぶ。
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  有罪なら言論窒息/反対派への見せしめ 東海の反応
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 東海地方の憲法学者、弁護士らは無罪判決を一様に評価した。
一方で、平和団体は、事件をきっかけにビラ配布を自粛するなど
捜査当局の取り締まりの動きに神経をとがらせている。愛知大法
科大学院の小林武教授(憲法)は、政治的活動を民主主義の根幹
と位置づけ、商業宣伝ビラよりも優越的地位を認めた判断を「学
説とも一致した正当な見解。優れた人権擁護の判決」と評価した。
有罪だった場合を想定すると「一般人の政治的活動はほとんど封
じられ、表現の目由が窒息状態になつていただろう」と危慎する。
イラク派兵差し止め訴訟弁護団の事務局長、川ロ創弁護士(名古
屋弁護士会)は、事件を「自衛隊派兵に反対の表現活動を狙い撃
ちした不当なもの」と指摘。「多くの市民運動が萎縮させられた
のは間違いない」とみる。
 その上で判決を「政治的表現の自由を『民主主義の根幹をなす
優越的地位を有する自由』とした意義は大きい」。昨年11月か
ら愛知県小牧市内の自衛隊官舎のポストや新聞受けに、派遺拒否
を呼ぴかける手紙やビラを投函してきた「有事法制反対ピースア
クション」(事務局・名古屋市)は、2月の事件を機に活動を控
えていた。
 事務局の山本みはぎさん(50)は「こんなことが罪になるなら、
ピザの宅配も仕事にならない。路上でチラシを配っても、『許可
がない』と拡大解釈される恐れがある。自衛隊派遣に反対する人
への見せしめだったのではないか」と批判。「判決が(ビラ配布
を)『政治的表現活動の一態様』と結論づけたことを一番評価し
たい」と話した。

【 宇井稔・東京地検八王子支部長の話し 】
主張が認められなかったのには不満がある。上級庁とも話し合い
対応を検討したい。

【 防衛庁の北原巌男官房長の話 】
 判決の内容については司法判断なのでコメントは控えたい。イ
ラクの復興支援活動は道半はであり、引き続き努力していくので
国民の理解と支援をお願いしたい。	

                        朝日 12/17

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