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       子どもたちの いま P 第6部 思春期のこころ
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 今、子どもがまるごと愛され、失敗や過ちを肯定的に受け止め
られ、生きることを楽しみながら自己形成していくということが
難しくなっています。
 その背景には、小さいころから「よい子」であるとか、何かが
できることに高い価値がおかれるという成果主義・能力主義の子
ども観があり、親のまなざし、社会のまなざしが子どもにとって
きついものになっています。
 親は悪気はないんだけれど、習い事やいろんなことで何かがで
きる、できないという価値観で子どもをみてしまう。そんななか
で、子どもは安心できず、負けそうなこと、できないことをやっ
て傷つくことがいやになっていくのです。
 失敗ができない子どもは悪いことをしたり、失敗を繰り返しな
がら、自分から世界に働きかけ、たっぷりとその時期を過ごして
納得し自分を太らせていくのですが、それがなかなかできない。
根っこのところでやせているような気がします。
 家庭もまたバラバラにされ、つながれない。そんななかで、子
どもたちは異なる価値観や文化に違和感を感じてしまう。母親と
二人三脚で私学受験に頑張ってきたある男の子は、クラスに自分
の価値観では受け入れられない子がいることで、深く傷つきます。
その子を攻撃することで自分をやっと支えていました。
 思春期は多様な他者と出会ったり、「いい子」の自分を問いな
おして否定的な自分に向き合ったりするときです。自分の中の「
黒い部分」を受け止めきれなかったり、「灰色」もあっていいと
思うことができないと、自分を支えきれなくなってしまうのです。
 以前、荒れた小学校高学年のクラスを担任しました。クラスに
は、能力主義的・差別的なつめこみ教育によって、学びにあきあ
きしたり、逃げ出したりする子がいました。また、いかに解答を
効率的に早く求めるかという受験勉強に追われ、学校でまじめに
やろうとしても体がいうことをきかない子どもたちもいました。
 そんな子どもたちもみずからの意志で生活や学習の主人公にな
るとき、みごとな力を発揮します。また、知的興奮がえられたと
き、いらだった気持ちが癒やされていく子どもの姿もたくさん見
てきました。
 子どもたちは、今という時代と向き合い、人の感情、世界や自
然界のなりたちなど本質的なことに出合いたいのです。
 希望の場として学校を取り戻すためには、少人数学級など学校
にゆとりを取り戻すシステムも大事でしょう。
 おとなが、子どもの誇りや感性を尊敬して、「こんな日本や社
会でいいのか」「このままの自分でいいのか」と問い、少しでも
現状を変えていくために努力することが必要ではないでしょう。
                         (つづく)

赤旗 11/4

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