――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――     
      「 原 発、何 を ど う 教 え る の か 」  商教協機関誌 巻頭言より
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
                                嘉悦大学元学長 名誉教授
                             全国商業教育研究協議会代表理事
                                      古 賀 義 弘

 この夏の全国研究集会では、メンバーの一人である杉本文郎先生が被災されたこともあり、会議の中でも、休
み時問で廿犬震災や福島原発問題の話題が集中した。また真嶋康雄先生からは、授業で原発問題をどのように取
り上げたか、どのような資料を生徒に提供したかという報告があった。
 大震災は文字通り国難であり、これまでにない多くの問題を投げかけている。そこに生活する全ての大にとっ
てはもとより、国民にとっても極めて深刻な問題を提起している。その復興と問題の解決には、少なくとも地域
住民の意向を最大限に尊重して取り組まなければならないことは論を上たない。同時に福島原発事故についても
同様で、地域の人たちのみならず全国民から地球上の全ての人たちが安全で安心する方法での解決、すなわち脱
原発を合言葉として取り組むことが不可欠であるし、この点についても論をまたないであろう。
 ここでは原発問題に絞って、私たち教師が考えなければならないであろうことの一端について述べてみる。
 いま原発に関して、その問題性等についての主な論調は自然科学分野から行われるものが多い。放射能が人体
や動植物にどのような影響を与えるのか、原子炉や建屋の解体はどうかといった観点からの指摘が多く行われて
いる。また原子力関連の学会からも反省の弁が述べられているし中高の理科や物理の担当教師が夏休みの期間中
に急遽集められて、授業での取り上げ方についての講習会等も行われている。これらのことは当然のことである
し、もっともっと力を入れて真実に迫る取り組むべきであろう。
 翻って、私たち社会科学分野からのアプローチはどうであろうか。商教協の先生たちは簿記・会計・情報・社
会といった科目の担当者である。まぎれもない社会科学分野に身を置く教育者である。そうするとその分野から
も、何らかのメッセージを出していく必要がありはしないだろうか。私は、直接でなくても生徒たちに、或いは
仲間の先生たちに対してご自身の言葉で、ご白身が身を置く社会科学の分野から問題提起をする必要があると考
える。私も後期の授業では原子力に関する問題を話そうと準備をしている。この夏私は、原発問題を原子炉メー
カーの観点からも考えてみた。世界の主要な原発メーカーは、目立GEニュークリアー−エナジー社、ウエスチ
ンタハウス・エレクトロニクス社(東芝が買収)、三菱重工と提携しているフランスの事実上の国営企業アレヴァ
NP社、ドイツ最大の重工業企業のシーメンス社、そしてロシアのロストマトム社の5社体制である。注目すべ
きはこのうち3社が日本企業や密接な関連を持っている。しかもこれらの企業はいずれも軍事産業としても我が
国のトップに位置する企業である。そしていま一つは、ドイツが脱原発の方針に転換したことに沿って、シーメ
ンス社が今後原子炉の生産には携わらないとの方向へと舵をきったことである。これらのことは多くのことを私
たちに示唆している。
 また、全国各地では反原発・脱原発の集会やパレード・デモが行われている。一般市民の呼びかけから青年の
積極的な関与と、これまでの労組等が主催する集会を大きく超えて新たな息吹を強く感じさせる声になっている。
ここにも私たちに大きな示唆を与える現象が生まれている。
 私たちはひとりの教師として、また教師集団として現在の状況について、それぞれの分野から何らかの形で問
題を提起していくことが求められているのではないだろうか。原発の何を、どのように教えて行くのか、またそ
のためにはどうすれば良いのかを憤重に、かつ早急に考えて取り組むことが必要であると考えている。

 


 
FC2 キャッシング 無料HP ブログ(blog)
inserted by FC2 system