―――――――――――――――――――――――――――――――― なぜ弱い景気回復の勢い 「労働条件の悪化で個人消費不振」 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 十月月例経済報告の基調判断は「景気は、堅調に回復している」とな っていて、基本的な景気判断は前月と同様、楽観的な判断が示されてい ます。その主な根拠は、中国、アメリカ向けの輸出に潤う大企業製造業 の急速な収益回復と、それら企業の積極的な設備投資に求められていま す。しかし景気回復といっても、その回復力は弱く、九月日銀短観(企 業短朗経済観測調査)でも、三力月先の業況判断指数(DI)は、原油 価格の上昇によって、とくに製造業で悪化する懸念が示されています。 なぜ、わが国では景気回復の勢いを感じることができないのでしょう か。その理由がどこにあるのか考えると、脆弱(ぜいじやく)な個人消 費の問題に突き当たります。消費の拡大を伴っていない十月十九日に発 表された日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では、暮らし向き 判断指数(一年前に比ベ「ゆとりが出できた」割合から「苦しくなった」 割合を差し引いたもの)はマイナス42.3%となり、多くの国民の生活が 以前よりも苦しくなっていることがうかがえます。 内閣府が実際には、どのように今日の景気回復を見ているかについて、 朝日新聞が概略次のような記事を載せました(十月十七日付)。「内閤 府はご2002年4月―6月以降9四半期におよぶ景気回復局面で企業 収益が弱56%増加しているにもかかわらず、実質賃金はわずか0.1%しか 増加しなかった状況に注目し、このような所得の回復の遅れを伴ってい ることが今回の景気回復の特徴だと指摘しでいる」 このことから言えることは、今日の景気回復が消費需要の拡大を伴わ ないものであり、そのことが、結局、景気の本格的な自律的回復を困難 にしているということです。実際、デパートやスーパーなど小売り販売 額は、九月までの7ヶ月月間、連続して前年を下回っているのが現実で す。 なぜこのような消費需要の回復を伴わない景気回復局面となっでいる のでしょうか。この問題の中心は、個人消費の多くを占める労働者の労 働条件の悪化と密接な関係があります。バプル経済崩壊後、日本の大企 業は長期不況の中で徹底したリストラにより労働コストを削減し、売り 上げが伸びなくでも高い収益をげることができる企業体を目指しました。 このために企業が採用した方法は、第一は、合理化による雇用労働力 の削減であり、第二は、相対的に賃金の高い正規労働者を、安い賃金の 非正規労働者に置きかえることでした。このことは、円高の下での生産 拠点の海外移転ともあいまって、激しい雇用破壊をもたらしました。 完全矢業率は上昇しつづけ2002年度には5.4%のピークを記録し、 完全失業者も三百五十九万人に達しました。景気回復居面で幾分下がっ たといっても、この九月の失業率4.6%、失業者三百九万人と、依然 として高い水準にあります。 しかも問題は、正規労働者の減少と、派遺労働やパート労働など非正 規労働者の増大による就業構造の変化です。総務省の「平成十四年就業 構造基本調査」によると、非正規労働者の比率は30%を超え、とくに 女性の場合は50.7%と半数を超えています(ちなみに男性は14.8%)。 このような労働者の非正規化は、言うまでもなく賃金の引き下げと、 企業にとって好都合な雇用の弾力化(不安定化)を狙ったものです。現 金給与所得も年々減りつづけています。 大企業が過去最高の利益を上げていますが、そのことは、これらの利 益が、労働者の賃金低下などの犠牲によって実現していることを物語っ ています。今日の景気回復が個人消費の拡大を伴う本格的な自律回復軌 道に乗らない最大の理由はここにあります。 赤旗 11/2