A 学力テスト「フィンランド 競争やめて学力世界一」  

                         06.01.10 赤旗 抜粋
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 OECD(経済協力開発機構)は最近、テストを中心とした評価にかわる
「形成的評価」の意義を説く報告書を出しました。形成的評価とは、学習の
達成度を、テストでの判定よりも、教師と生徒の相互交流の積み重ねを重視
して評価する方法です。世界的な学カテストの流行に一石を投じる報告です。
 「形成的評価は生徒の達成度を向上させる最も効果的な戦略の一つ」であ
るが、「その実践は努力を要するばかりでなく、教師が自分自身の役割や生
徒の役割に対する見方を変える必要がある」と書いています。
 報告書はカナダ、デンマークなど八力国のすすんだ教育実践を紹介してい
ますが、なかでもフィンランドを「競争と比較をやめて発達を強調」と高く
評価しています。平等と公正を貫くフィンランドは二○○三年のOECD国
際学力」調査で総合一位になり、学力世界一として海外の教育関係者の視察
が相次いでいます。
 フィンランド科学アカデミー外国会員でもある中嶋博・早稲田大学名誉教
授は「平等と公正を貫くのがフィンランドの教育政策です。テストも競争さ
せるためではなく遅れた子を引き上げるためのものなんです」と言います。
 フィンランドの学カテストは、5〜10%の生徒が受けるもので地域・学
校の成績は公表されません。しかし成績が落ち込んでいる学校に対しでは、
財政的・一人的支援が手厚く行われます。とくに学校の要請を受けて地方教
育委員会が派遺する特別支援教師の存在が重要です。彼らは学級坦任の教師
よりもさらに高い専門性を身につけており、学習の遅れた子のサポートにあ
たります。
 「理解の遅い子が6〜7%いることを前提に、特別支援教師を養成してい
るんです。日本でもすぐ実施してほしい対策です」と中嶋氏は話します。
 学ぶ喜ぴが必要
 へルシンキ大学のマッティ・メリ教員養成学科長は、学力向上をめざした
同国の研究の結論は「自分でなぜ勉強するのかを理解しているとよく身につ
くということだ」と話しています(『フィンランドに学ぶ教育と学力』)。
 久冨善之・一橋大教授も同様の主張をします。「今の子どもを競争で勉強
させるという考えには無理があります。断片的な知識の学習ではなく、学校
の勉強を子どもたちにとって意味が実感できるものに作り変えることが必要
です」「競争によって勉強させる仕組みは九○年代に決定的にくずれました。
終身雇用制がゆらぎ企業のリストラもすすむなど、学校でいい点数さえ取れ
ば将来が約束されるという幻想がこわれたのが大きな原因です」
 教育評論家の尾木直樹さんも「暗記型の詰め込みの結果を、学力とは呼ば
ない」として、「自分と社会の未来を切り開く市民としで生きていく力が学
力です。授業も『できる』ではなく、『わかる』ことが大事です。学カテス
トなど茶番です」と語ります。
 いま必要なのは学ぶ喜びを取り戻すこと。対象学年全員がうける学カテス
トはそれに逆行するというのが、海外でも日本でも教師・教育学者の共通認
識です。
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