メディアリテラシーフォーラム − 人とメディアの関係を考える −
2004.7.30
津市センターパレス
主催:三重県・三重県教育委員会
(社)三重県情報通信基盤整備協会
13:30〜13:40 主催者あいさつ 三重県地域振興部情報政策監 杉野 周二
13:40〜14:20 講演『e-Japan重点計画2004について」
内閣官房情報通信技術担当室主幹 細田 大造
14:20〜14:30 休 憩
14:30〜16:30 講演「メディアービオトープを育む:地域社会とメディアリテラシー」
東京大学大学院情報学環 助教授 水越 伸
愛知淑徳大学現代社会学部専任講師 小川 明子
主催者あいさつ
インターネットの急速な普及、デジタルテレビ、新世代携帯電話など新しいメディアの登場、
そのような時代潮流の中で、人はメディアとどう向き合っていけばいいのか、私たちは、今、
しっかリと議論しておく必要がある。そこで地域情報化セミナーでは、「メディアーリテラシー」
にスポットをあて、今年度のシリーズのテーマとして取リ上げた。
講 演「メディアービオトープを育む:地域社会とメディアリテラシー」
東京大学大学院情報学環 助教授 水越 伸
これまでメディアと言えば、テレビ・新聞を中心としたものであったが、現在はインターネットが主流となりつつある。佐世保の小学生殺人事件にふれて、ホームページの法的規制に対しては「悪いメディアから理性ある大人が子ども達を守る」という姿勢には懐疑的で、「メディア保護主義」であると断じた。何をいいメディアとしてとらえるのか?大人はどうなのか?などページの峻別の困難さを理由にあげた。なお「メディア・ビオトープ」試論のなかでマスメディアを自然環境と同列にとらえているところが興味深い。当日配布のレジュメの抜粋を紹介し、講演の一端にふれていただきたい。
T.日本のメデイアの生態系
@ マスメデイアの人工林
・新聞とテレビの大きな杉林
・貧相な灌木、下草=オルタナティブ・メディア、市民メデイア
A デジタル情報化の急速な進展
・巨大メディア資本の台頭
・ケータイ、コンビニ、2ちゃんねるの繁茂
U.なにが問題か
@ 情報の送り手と受け手の分離
・メディア事業体に所属するプロ、送り手
・お気楽な情報の消費者、需要者
A メディア表象と共同体の乖離
・アメリカ中心、東京中心の情報流通網
・アイデンティティの消失と政治
V.メデイア・ビオトープ
@ 草花園芸、小動物好きのメタファー
A メディア理論からメディア実践へ
W.「ビオトープ」とは何か
@ ドイツ語でBiotop、英語でBiotope
A 生物の棲息に適した小さな場所
B ドイツ=生物棲息圏の恢復
C 日本:里山復興運動との結びつき
X.「ビオトープ」の特色
@ 小ささ 一 巨大ではなく微細な生物生息圏をあつかうこと
A 「点」ではなく「面」 一 ウェブ上の空間であること
B 複合的 一 日常生活の中で生物多様性を維持すること
C 自然と人工物の混在 一 キットやマニュアルが存在すること
Y.「メデイア・ビオトープ」の射程
@ 多様性のあるメディア生態系の形成
A「多孔質」なメディア空間の形成
・小さなメディアヘの着目
・小さなメディアのネットワークが生み出す情報空間の重層的形成
・送り手と受け手の循環性の回復
・具体的な戦略、マニュアル、教材作り
Z.「メディア・ビオトープ」の課題
@ メディア空間の形成に「遺伝子(ミーム)」はない
・メディア空間のすきまやあなに棲む技術や素養としてのメデイアーリテラシー
A デジタル情報技術は「神の摂理」ではない
・デジタルを自らものとしていく営みの必要性
B 何を、どのように恢復するのか
・複雑で、長い時間を必要とする営みを引き受ける覚悟があるか
[.メデイアリテラシーとは何か
@ 読み書き能カ=識字力=リテラシー
A 中国語で「媒体素養」「媒体教育」
B メディアという「衣服」を、ただの商品として買って使うだけではなく、自分で編んだり、繕
ったり、新しい編み方を考えたりすることで、もっと自分のものにできるようにする営み。
\.総合的なメディア・リテラシー
メデイアの使用活動、受容活動、表現活動の総合された営み、およびそれに意識的であること