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   激動の中南米をゆく 「ウルグアイに左翼政権誕生」 @ 
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 ウルグアイの大統領選挙の結果が判明した十月三十一日夜、首都モ
ンテビデオはヽ親米保守の伝統的二大政党を打ち破って当選した左翼
勢力の候捕タバレ・バスケス氏の勝利を祝う数万人の市民で埋め尽く
されました。国民が変革の方向を選択した意味を探りました。

 「漁業会社で小さな漁船に乗っているが、賃金も労働条件も最悪。
労働組合もつくれない。投票は法律で義務付けられているのに、社長
は休みを保障しないので、多くの仲間が投票にいけなかった。おれは
退職覚悟で休みをとってタバレ(バスケス候補)に一票入れてきた。
タバレにはこんなひどい労働条件をなんとかしでもらいたい」
 バスケス候補の選挙事務所前で、同候補の選挙母体「進歩会議・拡
大戦線・新多数派」(以下「拡大戦線」)の旗を振っていたホルへ・
アボンダンサさん(39)が訴えました。
 人口三百四十万のウルグアイは、二十世紀はじめに一日八時間労働
制、老齢年金制度、最低賃金制度など当時としては世界的に見てもき
わめて進歩的な社会立法を次々整備した歴史をもっています。これら
を導入したのは二大政党の一つで社会民主主義的傾向を持っていたコ
ロラド党政権でしたが、同党はしだいに右傾化を強めます。一九八○
年代以降は、巨額の対外債務の返済に追われ、進歩的な制度も次々形
がい化していきました。
 とくに労働者にとって大打撃となったのは、一九九○年に市場万能
論に立った新自由主義政策を導入したラカジェ政権(国民党)が発足
したことでした。同政権は、賃金水準を決める労資代表による評議会
の開催を拒否し、団体交渉権を否定する政策を推進。同国唯一の労働
組合ナショナルセンター、全国労働者会議(PIT−CNT)によれ
ば、民間企業の場合、正規の雇用契約を結んだ労働者の数が2003
年には一九九○年比で八分の一にまで激減しました。
 新自由主義のもと、輸出向け畜産業や金融業を優先する政策がとら
れた結果、中小の製造業は次々倒産。さらに、隣国アルゼンチンの経
済危機の影響を受けた経済不況がウルグアイを襲いました。
 アボンダンサさんは、「牛肉も高くて、一週間に一度食べられれば
いいほうだ」と嘆きます。世界有数の牛肉輸出国であるウルグアイで
すが、もうけ優先の大企業によって外国にはどんどん輸出される一方、
国内消費に回される牛肉は品薄で、庶民の手にはとどかないほど高価
になっています。「一部の大企業や外国企業だけがもうかる仕組みを
つくってきたのがコロラド党や国民党の政治だ。それを転換するとい
っているのが拡大戦線だ」といいます。
 全国労働者会議は、国民生活改善のためにも、労働組合結成権、団
体交渉権を新たに法制化することを主張。選挙前に各大統領侯補に会
談を申し入れました。ところが、二大政党候補は会談を拒否。労働法
制の見直しを約束したのは、「拡大戦線」のバスケス候補だけでしだ。
 選挙結果は、バスケス候補が労働者の集中する首都モンテビデオで
60%近くの支持をえて、大勝しまた。次点の国民党は、農村部を中
心に票を固めたものの伸び悩み、これまで都市部を基盤としてきたコ
ロラド党は、前回選挙よりも20ポイント以上低い10%の支持しか
えられませんでした。
                         赤旗 11/3

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