NHK番組改ざんの裏に「検閲」
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 従軍慰安婦放送「やめてしまえ」安倍(官房副長官)中川議員が圧力
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 政府与党による事前検閲、放送への介入というべき事件が明るみに
出ました。「従軍慰安婦」制度の責任追及をテーマに、NHKが2001
年1月に放送したETVシリーズ「戦争をどう裁くか」の第二回「裁
かれた戦時性暴力」の内容が放送直前に大幅に変更された問題で、自
民党安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相は12日、当時NHK
関係者に説明を求め、自分の考えを伝えていたことを認めました。ま
た番組の取材を受け、番組が改ざんされたと提訴している市民団体「
戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)は会見
し「表現の自由を侵害した政治家の介入と、NHKの偽証を断じで許
さない」とする抗議声明を発表しました。

 「朝日」十二日付報道によれば、番粗放送前日の01年一月二十九日、
当時、官房副長官だった安倍氏と「日本の前途と歴史教育を考える若
手議員の会」代表の中川氏が松尾武放送総局長らNHK幹部を議員会
館などに呼び出し「一方的な放送はするな」「公平で客観的な番組に
するように」「それができないならやめてしまえ」などと発言。NH
Kの幹部の一人は「圧力を感じた」とのべています。
 「やめてしまえ」の発言についで中川氏は「朝日」の取材に、「ま
あそういう(放送中止の)意味だ」と答えています。この問題で番組
のチーフプロデューサーは、内部告発への窓口にもなるNHKのコン
プライアンス(法令順守)推進委員会に「政治介入を許した」と調査
を求めています。
 番組は戦争中、日本軍の「従軍慰安帰」などへの戦時性暴力を明ら
かにし、昭和天皇を有罪とした「女性国際戦犯法廷」を取り上げたも
のでした。しかし、放送されたものは当初、取材協力者説明した内容
とは違い起訴状の紹介もなく、戦時性暴力がなかったようなコメント
を急きょ挿入したり、肝心の判決には一言も触れないものになってい
ました。VAWW ‐NETジャパンは番等改ざんされたとし提訴。昨年三月、
一審の東京地裁判決はNHKの責任を問わずに、製作会社のドキュメ
ンタリー・ジャパンにのみ賠償支払いを命じました。現在控訴審を東
京高裁で係争中です。
 この裁判のなかでNHKは「圧力はない、編集権の範囲内」と繰り
返してきました。しかし、NHK幹部が試写を通じ、変更を繰り返し
要求したうえ、放送二日前にNHK上層部が了解して完成した番組さ
え、さらに改ざんされていました。
 今回の報道について、NHK経営広報は「コンプライアンス委員会
にかかわることで、守秘義務がありコメントできない」としています。
また十二日に開かれ経営委員会では「議題にならなかった」としてい
ます。
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 真相究明求める「戦争と女性への暴力」
           日本ネットワーク共同代表の西野瑠美子さん

 政治家が番組の内容に介入した事実は、放送の自律を定めた放送法
の精神に背くだけでなく、憲法が保障する表現・報道の自由を侵害し
た重大な違憲行為であり、許すことはできません。
 これまで裁判の審議のなかで、NHKは外部圧力はなかった、と繰
り返し否定してきました。司法の場で重大な偽証を続てきたことに強
く抗議するとともに、徹底した真相究明を求めたいと思います。
 同時に、こうした事実がNHKの内部告発で出できたことを、感動
をもっで受けとめています。その勇気に心から敬意を表するとともに、
こうした内部告発者が「カ」でつぶされないことを強く願います。事
実を隠ぺいし、責任回避を続けてきた海老沢会長にたいして、即刻辞
任を求めたい。安倍・中川両氏にも即刻、国会議員を辞任してほしい。
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                          赤旗 1/13

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