アンドリュー・ニコル監督
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           武器商人「ロード・オブ・ウォー(戦争の神)」    
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 取材にもとづいて戦争やテロの裏で暗躍する武器商人を描いた劇映画「ロード・
オブ・ウォー(戦争の神)」が公開されています。製作・脚本も担当したアンドリ
ュー・ニコル監督は、映画の中で、米国などの武器輸出大国に批判の矢を放ってい
ます。「武器輸出三原則」を骨抜きにし、憲法を変えようとする日本は、同監督の
目にどう映るのか。話を聞きました。
 武器商人というテーマにとりくんだのは、彼らの人間性に興味があったからです。
何十万人の死の責任を問うても、「自分は人を撃ったこともない。責任はない」と
言える人たち。いったいどういう人なのか。実際に会ってみると、人当たりのいい
ビジネスマンで、魅力的でさえある。彼らは究極の資本主義者なんです。そう考え
ると、彼らを理解できます。彼らが唯一従うのは「金」です。同胞を殺しかねない
武器でも平気で売る。倫理観の矛盾や良心の呵責(かしやく)がないので、その分
だけ、物質的には成功する可能性は大きいのです。
 主人公が息子のおもちやの銃を捨でる場面を描きましたが、彼はよき夫、よき父
として家庭を守りながら、たくさんの家庭に悲惨をもたらしています。分裂してい
る。しかし、そういう二面性は、程度はあれ多くの人が持っているとも言えます。
 自分の行動が何をもたらすか、突き詰めで考えないということです。たとえば米
国は世界最大の武器供給国ですが、米国人の多くはその事実から目を背けて、考え
ない。私には、変えようとする意思がないように思えます。アメリカに住んでいる
私自身、間接的な共犯者ではないのかと感じます。
 日本は、戦争をしない、武力を持たないと決めた憲法を持っています。ほかの国
が、みんな、日本のような憲法を持てば、世界中が安全になるのに。
 でも、その憲法を変えようとする動きがあると聞いています。日本は、武器輸出
を禁止していると思っていたのですが、その規制は緩和されたのですね。武器を売
るというのは、自分たちに跳ね返ってくるんですよ。米国がいい例です。米国がイ
ラクやアフガニスタンに売った武器で、自国の兵士が死んでるんですからね。
 いま世界では、十二人に一人が銃を持っている計算です。武器商人は、残りの十
一人にいかに武器を売ろうか考えている。その十一人に日本は入りたいんですか。
そうではないと信じたい。これ以上武器にかかわる国はいりませんから。
                                 05.12.30
 武器輸出三原則 

 @ 共産国 A 国連決議による禁止国 B 紛争当事国やその恐れのある国への
武器輸出の禁止。1967年に規制が始まり、76年には事実上の武器輸出全
面禁上に。しかし83年、中曽根内閣がこれを緩和して対米武器技術供与を容
認。2004年さらにミサイル防衛に関する製品の日米共同開発・生産が容認
され、規制は骨抜きになりました。

 
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