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     生きる力の教育を 実態知る自治体で「子供に夢を持たせて」 
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                        大平 光代(大阪市助役)

 子供の自殺がまた増えています。これまでも「自殺予備軍」で死にたいと思って
いる子はたくさんいたのですが、今、歯止めが利かなくなっていることが怖いです。
弁護士時代に担当した約80人の子供たちと、メールのやり取りをして感じます。
リストカットする子でも、手首は切りますけど本当に死にたいかというとそうでも
なかったのに、ここへきて本当に死んでしまいたいに変わったのです。
 首相は「自殺防上に特効薬はない」と言いましたが、周りが修復作業を急がない
と駄目なんです。これまで上は見守って、心の癒やしになってあげれば済んでいま
したが、一歩進んで、親子関係や環境の修復を第三者がする必要があると感じてい
ます。キーワードは「プライド」です。
 マイナスに働くか、プラスに生かせるかが運命の分かれ目。まず自分は駄目だと、
レッテルをはってしまう。友達に助けを求めればいいのに、それができない。マイ
ナスのプライドに支配され、身動きが取れなくなってしまう。今のいい子の特徴で
す。
 私は14歳の時、兵庫県西宮市の河川敷で割腹自殺を図りました。転校先の学校
で、度重なるいじめを受け、親友に裏切られたことが原因でした。あの時の悲しみ、
みじめさ、突き刺すような視線、忘れたくても忘れられません。いじめや虐待は、
それを受ける側の人間性を否定するのです。人間性を否定された者は、人としで許
されないと分かっていながら、他人の人間性を否定する側に回ってしまいます。
 道を踏み外した時は、もう人間なんて大嫌いやったんですよ。暴力団の組長と離
婚し、酒浸りのころ、「なんであの時、死なれへんかったんやろ。生きてても、し
ゃあないわ」と、酔っては愚痴っていました。その後、奮起して弁護士の勉強に取
り組むことができたのは、大平のおっちやん(養父)という恩人が立ち直るきっか
けを与えてくれたのですが、結局、いい意味のプライドが自分を支えていたからで
す。どこかで自分の人生こんなはずじゃないと、芯にプライドが残っていたから立
ち直れたと思います。私が経験談を話すのは、一人でも自殺を思いとどまり、非行
に走ることは割に合わないと立ち直ってくれたら、という願いからです。
 今の日本は、子供たちが夢を持てないことが問題です。自分がこの日本にいて、
将来、努力すれば夢が実現できるんだという思いを実感できません。首相にはそう
した実感ができる方策を打ち出していただきたい。夢があるから頑張れるんです。
前向きに生きる力になります。
 大阪市教委は今年度から、小中学校に習熟度別少人数授業を導入しています。当
初「レッテルばりになる」といった指摘もありましたが、今、例えば「じっくりコ
ース」の子が問題を解けるようになったという感想が多いんですよ。何が分からな
いか分からないままほったらかし、というのが一番問題なんです。
 (税財政の)三位一体の改革で、義務教育を財政ごと地方に任せることには(文
部科学省などの)抵抗が強いですが、教育にカを入れない首長は淘汰されます。首
相には現場に近い地方行政こそ、地域の実態にあった教育ができることを分かって
いただきたい。
                               05.1.6 毎日

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