―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 少 子 化 F 「 い ま と 明 日 」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――「ここでは子どもを産んでも働き続けている人はいないわよ」。東京・北 区に住む江藤涼子さん(26)=仮名=は、かつて職場の先輩にそういわれ、正社 員として勤めていた会社を辞めました。高卒で入社し、二年後に長女を妊娠。 「若くて知識もなかったので、そんなものかと…」。深く考えずに退職した ことを、今では悔やんでいます。 結婚しても、出産しても、働きつづけたいと願う女性は増えています。そ れが難しい職場に、江藤さんはたびたびぶつかりました。長女が一歳になっ たころ、「生計の足しに」とパートに出ました。長女が病気で入院し、自分 も体調を崩して休みがちになると、上司に「お休みが続いているから」とい われ、解雇されました。 [シングルというと] その後、離婚。派遣会社に登録しましたが、派遣先では家族構成を必ず聞 かれます。「シングルで子どもがいる」というと、断られることも二度三度。 「お子さんがいる人は突発的な休みもあるから」と、嫌われます。「だから、 職場で『早くお迎えに行ってあげな』『病気ならそばにいであげなよ』とい ってもらえたときは本当にありがたく感じます。そういうゆとりと理解のあ る職場が増えるといいのですが…」と江藤さんは語ります。 派遣労働ネットワークの関根秀郎さん(東京ユニオン書記長)は、「派遣 や契約社員が、妊娠や出産を理由に解雇されたという租談が最近よくある」 といいます。派遣会社の営業担当者から「派遣は妊娠したら即終了が当たり 前」といわれ、組合に相談に来たときには、すでに中絶手術を予約していた 人もいました。 「この人は交渉の結果、無事育休を取得でき、職場復帰しました。でも、 相談に来るのは氷山の一角」と関根さん。「育児と両立しやすい柔軟な働き 方など、といって非正規雇用を増やしながら、その人たちが妊娠・出産もま まならないのは矛盾です。どんどん増えている非正規雇用労働者が、働きな がら育児もできる環境、出産しても働き続けられる環境を整えなければ、少 子化に絶対に歯止めはかけられない」と指摘します。 [均等法を活用して] 厚生労働省によると、各都道府県の雇用均等室に持ち込まれた個別紛争解 決の援助申立件数は、年々増えています。二○○三年度には百五十七件。退 職勧奨・解雇に関するものが百二十三件で、うち九十六件が妊娠・出産等を 理由とした解雇でした。 東京労働局雇用均等室長の菅原千枝さんは「男女雇用機会均等法の第八条 は、女性労働者を妊娠や出産、産休取得を理由に解雇することを禁止してい ます。正社員だけでなく、パートや派遣、契約社員も同様です」と語ります。 均等法が制定されて今年で20年。しかし、法の趣旨が行き渡っていると はいえません。女性の側が、「前例がないといわれると居づらい」「会社に 迷惑をかける」などの遠慮から、声をあげることをためらう場合も多くあり ます。 菅原さんは「これからは、子どもを持ちながら女性も能力を発揮すること が求められます。会社の側は『体を大事にしなさいよ』などといいながら解 雇をいってくることも多いのですが、そういう圧力に負けないで、均等法を よく知って活用してほしい」と話します。(つづく) ―増える非正規 ――――――――――――――――――――――――――― 「昨年7−9月期の労働力調査(詳細調査)では、雇用者に占めるパイト・ アルバイ、派遣・契約社員などいわゆる非正規従業員の比率は現・5%にの ぼり、昨年1−2月と並んで過去最大。 男性は16・3%、女性は51・6%で、女性労働者の半数以上が非正規社員です。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 赤旗 05/1/29