今の自分を支えるきずな「定時制の灯消さないで」   
                        06.01.03 赤旗 抜粋
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 東洋大学一年生の菅原裕子さん(19)は、小学二年から学校に行けなくな
りました。不安を抱えながら茨城県立水海道第一高校定時制の門をくぐった
のは、五年前。いま「定時制は無限に学べで、無限の絆(きずな)が生まれ
るところ」と感じています。高校再編の名の下に、全国で夜間定時制の灯が
消されようとする中、「居場所をなくさないで」と運動の輪を広げる官原さ
ん。不登校や二ートを大量に生み出す社会を変えたいといいます。
 昨年七月に開かれた「定時制の灯を消さないで!」首都圏集会で菅原さん
は実行委員長を務めました。昼間は本屋でバイト、スクールライフサポータ
ーとして小学校で不登校の子どもの相談にのり、夜は大学、一時間半かけて
自宅につくころには、日付が変わりそうな日々をこなしながら…。
 「もうだめだ」と
 かつての彼女を知る人からは想像もできません。「定時制に入ったころ、
青い顔してうつむいていた。通えるだろうかっでみんな心配だった。人前で
意見をいうことができなかった」。同校の飯塚忠教諭はいいます。学校に行
かなくなったのは、小学校二年生の冬休みあけです。学級崩壊。学校は毎日
同じことのくり返し。計算などの早さの競争。ゆっくりした自分にはあわな
かったといいます。明るい日に、自分をさらけだすのが怖くて夜しか外に出
られないことも。中学に入るころからフリースクールヘ通いました。同じ不
登校だった先輩が通うのをみて定時制をめざします。試験の勉強を始めたも
のの、掛け算もわからない。でも、好きなビジュアル系バンド・ラファエル
の詞に、自分で自分に挑戦してみることが大切だと励まされました。
 入学早々生徒同士のけんかや、教師の怒鳴り声に「こんな危ないところに
通えるだろうか」不安でした。ある日、数学のプリントが配られました。全
くわかりません。周囲のカリカリという鉛筆の音に、「もうだめだ」。その
時、いつも改造した爆音のバイクの後ろに乗って通学する女子生徒がいいま
した。「センセー。こんな難しい問題できないよ」。「そうだよなあ」と先
生。難しいことを難しいと、自分の気持ちを素直に伝えていいのだと、その
子から、定時制から、教えでもらいました。
 「居場所みつけた」 
 教師に誘われ生徒会へ。自分の意見や存在を認めてくれる生徒や先生のな
かに居場所が見つかりました。最も印象深いのは卒業生を送る会にむけて四
年生一人ひとりを主人公にドキュメンタリー映画をつくったことです。話し
たこともない先輩にインタビュー。緊張で気分が悪くなりました。でも、バ
イク好きで「怖そう」と思った先輩の家を訪ねるとなんとお寺。先輩はお坊
さんのけさ姿。それぞれの思いを抱えて定時制の扉をたたき、卒業していく
ことの重みに「じ−ん」としました。生徒会にかかわり始めたころ、統廃合
の嵐とたたかう埼玉の定時制高校の生徒たちによる発表会に出かけました。
不登校だったり、鑑別所に入ったりした仲間が定時制で変わったことを壇上
から堂々と語ります。生き生きとした集会に、当時一年生だった菅原さんは
「すごい!定時制って陰に隠れているものだと思ったた。その定時制の生徒
たちでこんな集まりができるんだ。自分たちもやってみたい」と。茨城の運
動が始まりました。
 取手駅前での統廃合反対署名、定時制の映画や演劇づくり、県内の集会な
どの中心となっで頑張ってきました。定時制には親のリストラや家庭崩壊な
ど経済的な困難を抱えた生徒が増えています。統廃合によって生まれる総合
単位制の高校は高倍率になり、行き場を失う子どもが生まれます。「宝物の
ような定時制を経済効率だけを考えた机の上の計画でなくさないでほしい。
なんの力もない自分が悔しいけれど、こんな社会を変えたい」と菅原さん。
 苦しいときを一緒に越えてきた、クラスの仲間、定時制やフリースクール
の先生、全国で出会った定時制の友達、家族…。毎日少しずつ顔が上がって
いく自分をときには励まし、ときにはしかってくれて、感謝の気持ちでいっ
ぱいです。周りの人との絆があったから今の自分がいる」そして、「自分も
定時制の先生になりたい」と胸をふくらませます。
                    人間ドキュメント「明日ひらく」
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